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●詩、小説●

2023-10-01 05:42:16

~最期 後編~ 人魚姫



作 林柚希

「父上!父上。」ダニエルとオリビアは、一緒に王様を探していました。
「おお。ダニエルとオリビアさんじゃないか。どうしのかな?」
「僕たち二人で結婚しようと思います。」ダニエルは、早口で言いました。
「え!?お前たち二人で!?」王様は驚きました。
「はい、僕は弟だけど、ラウル兄さんとは双子だし、一応王位を継ぐ意思があるのでね。」ダニエルは今度はゆっくり言いました。
「だが、そうするとラウルがな…。」王様はどうしたものかと思案中のようです。
「兄さんは、王位を辞退したんだよ。父上。」
「なんと!そうなのか?ダニエル。」確認するように王様は言いました。
「そうか、…それならば致し方ない。ラウルにも訊かねばなるまい。」王様は、顔をしかめましたが、仕方なさそうに言いました。
「わたくしからも一言。ダニエルさんとの結婚を了承致しました。」オリビアからも言い添えました。
「これからは、この国の一人としてお仕えしようかと存じます。」オリビアは言いました。
「わかった、二人の結婚を認めよう。」王様もそのつもりで、結婚についての様々な打ち合わせを二人としたのでした。

ダニエルとオリビアの結婚が本決まりとなり、但し結婚式まで伏せておくことになりました。
その結婚式前夜。
豪華な船上で、盛大な晩餐会が開かれました。
沢山の人に目を白黒しながら、休憩しようとパールは、甲板までやってきました。
(ふ~。すごく人が大勢いるなぁ)ため息が思わずもれます。
すると、「パール!」と呼ぶ声が海から聞こえてきました。
パールは、誰かと思ったら、人魚のお姉さんたちでした。
その時、カラン、と音がしてその方向を見ると、なんと短剣が転がっていました。
「あなたが日々、憂えているのはしっているわよ。」
「パール!その剣で王子を刺したら、元の人魚に戻れるわよ。」
よく見ると、お姉さん達は髪が短いのです。
「私たちはそのために、魔法使いのおばあさんに髪をあげたの。頑張ってね。」そういうと、人魚たちは海に潜っていきました。
(剣なんて…。)悲しい顔でパールは思いました。
(ラウルを刺すくらいなら、いっそ。)そう思った矢先です。
キューというイルカの鳴き声を聞きました。
友達のイルカのようです。
その声にハッとしたパールは、剣を拾い上げ、海に投げ捨てました。
(イルカさん、私の思いを聞いて、私は大丈夫。幸せになるわよと、姉さん達に言ってね)
もう一度、キューとイルカは鳴いたのでした。

「パール!」後ろを振り向くと、ラウルでした。
(ラウル…)パールは肩が震えていました。
「パール。寒いのかい?大丈夫?」ラウルは優しい。だけど、と悲しい気持ちでいるパール。
「船内は凄い混雑だね。僕も休憩。」ふーっとため息をつくラウルに、ぎこちなく笑うパールでした。
「僕は、君に話があるんだ。」ふわっと、パールを抱きしめるラウル。
「僕と結婚してください。」その優しい声に、パールはものすごく驚いたのでした。
じたばたするパールをぎゅっと抱きしめながら、ラウルは更に言いました。
「僕は王位を辞退したんだ。王位は弟が継ぐから大丈夫。」
もっと驚くパールでしたが、ラウルは続けて言いました。
「僕は、ひとめ会った時から好きになってた。だからプロポーズを受けて。」祈るように囁くようにラウルは言いました。
パールは、嬉しくなりこくこくと頷くと、ラウルは安心してパールにキスしました。
友達のイルカは、安心して海の中に潜っていきました。

船内に戻った二人は、王様の前に行きました。
「なんだ、ラウルか。」王様はこちらを向いて言いました。
「お前、王位を辞退したな。全く、しょうがない奴だ。」王様はひげを触りながら言いました。
「僕は王位を辞退して、この女性と結婚します。」後ろに隠れるようにしていたパールを見て、王様は言いました。
「パールさんと言ったな。ラウルと結婚するのだね?」
王様に、尋ねられて、思わず返事をしようとしたパールは、せき込みだしました。
「パール、大丈夫かい?」思わず、ラウルは声を掛けました。
せき込むのが終わると、パールの手には、小さな魚の骨がありました。
「まぁ!」驚いた声を出すパールに、またもや驚くラウル。
(声が出るようになったわ!)嬉しいパール。
「王様。私はラウルさんと結婚したいと思っております。」スカートをちょんと持ち、一礼しました。
「おおそうか。それなら良いが。」王様も、思わず顔がほころびます。
「パールさん。不思議な美しい声をしておるのう。今度歌ってもらえないだろうか。」王様が言いました。
「パールは疲れているから、退出します。父上。」ラウルは、王様にそう進言すると、パールと立ち去っていきました。
「そうか、わかった。」王様も万事心得ている様子です。


ダニエルとオリビアの結婚式の後、そっと城から離れた二人は、結婚して数年後子供をもうけます。
そして、いつか「昔々、あるところに…」、と子供に話して聞かせるのでした。


※よく言われる所の「人魚姫」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
紹介「~邂逅~ 人魚姫 vol.1

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~嵐の夜~ 人魚姫 vol.2

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~相談~ 人魚姫 vol.3

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~お側に~ 人魚姫 vol.4

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~最期 前編~ 人魚姫 vol.5

物語の最後は、こちらになります。
紹介「~最期 後編~ 人魚姫 vol.6

物語の番外編になります。
紹介「~番外編 イチョウ並木~ 人魚姫 vol.7
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