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●詩、小説●
2024-10-29 12:49:27出窓
作 林柚希
今日も下を覗くと、いろんな存在がいる
犬、といのが人間と散歩していたり
猫、といのが餌をあさっていたり
烏、というのもあさっていたっけ
私は文鳥
白い体に赤いくちばし
飼い主は「ゆきちゃん」と名付けてくれたけれど
「ゆき」の意味ってなんだろう
雪のように白いからだよ、って教えてもらったけれど
そもそも「雪」がよくわからない
同じ部屋にある「テレビ」というもので
「雪」は観たことがあるけれど
それが冷たいのか、それとも暖かいものかよくわからない
ある時、飼い主がお掃除していたので
出窓の窓を開けていたら
ご主人様のいないうちに
ある存在がやってきた
私よりもう少し小さい雀だ
カゴの周りに落ちている餌をあてにしてやってきたようだ
「ちょっとお邪魔するよ」
「うん、いいよ」
ちょこちょこ、つんつんと餌をついばみ始めた
「あなたの食べ物、美味しいね」
「そう?いつも食べてるけど」
「いいなぁ、いつも食べられるなんて」
「ん~、でも自由にしてられるってよさそうだけどな~」
「結構、厳しいんだよ」
「そっか」
一通り、食べ終わると
「ありがとう、美味しかったよ」
と、言って飛び去って行った
その方向を見ると
他の雀達とチュンチュン鳴いている
「ここの食べ物は美味かった」と報告しているようだ
いいなぁ、私も仲間と一緒に飛んだりとかしてみたいなぁ
そうかと思うと、別の日には
「うまそうだな」
ニヤっと笑った黒猫が、出窓の端から私を狙っているようだった
ジャンプして、出窓の端に飛び込んでこようとする
「ニャ~」(えいっ)
結局、出窓の網戸に当たって、中には入れなかったけれど
ハッキリ言って怖い!
でも、飼い主が「あっちへ行きなさい!しっしっ」
と言って、出窓を閉めてくれたのでなんともなかった
あ~、よかった
危ない、危ない
また別の日
お掃除の日
また、あの雀がやってきた
「またやってきたよ」
「そっか」
「歓迎してくれないの?」
「ゆっくり歓迎してあげたいけれど、掃除しちゃうと餌がなくなっちゃうから
早く食べた方がいいと思うよ」
「餌?」
「食べ物の事だよ」
「じゃ、早く食べなくちゃ」
ちょんちょんとジャンプしてはつんつん、つついて食べたのだった
「ちょっと物足りないけど大方満足」
にこっとして
「僕、茶助て言うんだ」
「私はねぇ、ゆきちゃんだよ」
「かわいい名前だね」
「ちゃすけってなんでそんな名前なの?」
「僕もね、人間に飼われていたことがあってね
茶色のオスだから茶助って名前になったんだ~」
「へ~、そうなんだ」
「ゆきちゃんはなんでそういう名前なの?」
「えと、冬に降る雪っていうものと一緒でね、
体が真っ白だからだよ」
「そか、ピッタリだね」
「そ~お?ありがとう」
「また来ていいかな?」
「いいよ、また来てね」
ぱたたたっ。
飛び去って行った
また別の日
茶助がやってきた
もう1羽連れて
「やぁ」
「こんにちは」
「また、食べ物もらっていい?」
「いいよ」
「あとね、友達連れてきたんだ」
「あたしね、チャコっていうの」
「私は雪ちゃんだよ」
2羽して
「よろしくね」
カゴの周りで、つんつん、つつきながら
「ウマイでしょ?」
「美味しいね」
「もうちょっと食べたい?」
「うん食べたい、食べたい!」
雀2羽してこくこく頷いたので
雪ちゃんは、餌箱に頭を埋めて、右に左に頭を振って
食べ物をばらまいたのだった
「これだけあれば十分!」
「ありがとう、雪ちゃん!」
2羽の雀は、嬉しそうにチュンチュンつついて食べて、
「はぁ~、久しぶりにお腹いっぱいになったよ」
「私もお腹いっぱい」
「助かったよ、雪ちゃん
ここのところ、お腹空いてたんだ~」
「そうだよね、食べる場所がなかったもんね」
「ごちそう、ありがとう」
「いえいえ」
「じゃ、またね」
ぱたぱたと2羽の雀は飛び去ったのでした
2羽がいなくなると寂しいなぁ
また来てくれるといいなぁ
また、別の日
いつものように飼い主が出窓にカゴを置いて
窓を開けてお掃除している
でも、今日はいつもと違った
飼い主はカゴの扉をあけっぱなしにしていたのでした
ぱたぱたと雀が2羽やってきて
「こんにちは」
「こんにちは」
「今日はカゴの扉があいてるから
たっぷり、ご飯があげられるよ」
「ううん、いらないよ」
「どうしたの?」
「逆なんだよ」
「なあに?」
「前に(うらやましい)って言っていたでしょ?
外に出ておいでよ」
「えっ!?外に?」
「そう、外に」
ぴょんと扉を飛び越して
かごの外に出てみる
「外ってこんな感じなんだ」
「どう?」
「ん~、怖いけどわくわくする」
「そのまんま、外に出てみたら?」
茶助にうながされて雪ちゃんは
「う~ん、そうだね~」
すると、チャコちゃんも飛んできて
「わ~雪ちゃん、外に出たんだね~」
「うん、出てみたよ」
「一緒に飛んでみない?」
「うん。自由に飛んでみたい!」
ぱたぱたぱた
春の日差しの中
2羽の雀と1羽の文鳥は共に外の電線に飛んで行ったのでした
レースのカーテンの中、カゴを残したまま
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