ブログで趣味でプログラミングからお料理まで呟いています。よろしくー。(^-^)/


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●詩、小説●

2024-08-02 04:12:31

忘れ形見vol.2その時俺は

作 林柚希

俺はその時、物凄く急いでいた。ふいっと何も用意をせずに富士山の朝日が見たくて朝方近くにぶっとばして、見に行ったのだった。でも、今日は平日だったから急いで戻らなくちゃ学校に遅れる。ヤバイ。急いで、バイクにまたがり、エンジンをふかして道を急いだ。それが、そもそもの間違いだった。寝不足で、頭も痛かったせいもあったけれど、ハンドル操作を誤ってしまい、「しまった」とつぶやいた時は事故っていた。
しばらくすると、川のど真ん中だった。
あれ?俺は家に帰ろうとしていたんじゃなかったっけ?まぁ、いいか。すると「ゆうと~、ゆうと~」と、声が聴こえる。川向うは靄がかかってよく見えない。誰だろ?俺を呼ぶのは。

とりあえず、川を渡ってみよう。
川の中ほどで、ようやく人がおぼろげながら見えてきた。
「勇人。こっちきちゃイカンよ~」と声を出しているのはあれ?おじいちゃんじゃんか!
急いで渡りきると「よ!おじいちゃん。元気か?」と声をかけた。
おじいちゃんは、がっくりと肩を落として、
「しまった。声をかけるべきじゃなかったの~」と悲しそうな声だ。
そういえば。「おじいちゃん、亡くなってたよな?元気そうだけど。」
「違うんじゃよ。ここは三途の川じゃ。わしは亡くなっているし、勇人、お前さんも亡くなってしもうとるんよ。」
「何言ってるんだよ、じいちゃん!俺ピンピンしているよ?」
「いや、三途の川を渡ってしまうとのう、死んでしまうんよ。正確には、バイクっちゅうもので交通事故でのう、亡くなったんよ。」
「いやだなぁ、脅かさないでくれよ。夢だろ?どうせ。」
「何度も言っとるがのう、お前さんは死んでしもうたんよ。この先に、地獄の門が続いて閻魔大王様がおるで、話を聞けば分かるじゃろうて。」
「う、嘘だろ?おじいちゃん」現実なのか?これ。
「混乱しとるようだがの、とりあえず、渡ってしまったものは仕方ないのじゃ。先へ行きなされ。」
「嘘だ。絶対夢だ。」バシバシ頬を叩く。夢なら覚めてくれ!頼む。暫く、自分にデコピンしたり痛いことを散々やったけれど、変わらない。確かに、俺は富士山から家に戻る途中だったはずだ。
おじいちゃんが同情して「途中まで、一緒につきそうで、がっかりしなさんなや。」
「おじいちゃん、川を戻っちゃいけないのか?」
「いけない決まりになっておるんよ。だから可哀そうじゃが諦めなされ。」

俺。死んじまったんだ。体に力が入らない。本当なんだろうか。おじいちゃんがいるだけ、まだマシなのかもしれない。一緒に付き添ってくれて、ちょっとした旅気分だった。
生前のおじいちゃんは、まだ子供の頃によく色んな遊びをしてくれてたけれど、病気で亡くなってしまったんだっけ。
「あの時が懐かしいのう。おばあさんは元気かのう?」
「おばあちゃん?元気に過ごしてたと思うよ。最近会ってなかったけれど。」
「おばあさんが勇人のお葬式にでるんじゃろうのう、あいや、その…すまん。」
「いいんだよ、おじいちゃん。付き添ってくれるだけありがたいんだからさ。」
やがて、大きな門の前に来ると、おじいちゃんが、「わしが付き添えるのはここまでじゃよ。まぁ勇人ならまた会えるだろうて。」
「ありがとう、おじいちゃん。」
「また会えるだで、心配しなさんな。」
「うん、行ってくる!」
門をくぐると、二人の巨大な仁王像のような存在が番をしていて、ちょっとぎょっとする。
あとは、普通に人が通っているだけなのだが。やがて、赤い絨毯の先に、巨大な机と鏡があり、人が列をなして順番に呼ばれるのを待っているようだ。俺も、列に加わって、順番を待つ。巨大な建物で、巨大な机の上に、金の地に黒い文字で「閻魔大王」と書いてある。
真っ赤な顔に、豊かなひげを蓄えて、恐ろしげだが、俺は特に怖いとは思わなかった。
「次!」
お、俺の番だ。巨大な机の前に置かれた椅子に座り、とりあえず待つ。
「ほぉぉ、お前さんは、生前特に悪いことはしてないようじゃの」
閻魔大王様に言われて「そうですか?俺友達にイタズラしてポケットにカエル入れたりとかしましたけど。」
なんだか不思議なんだが、目の前の鏡にこれまでの生前の出来事が次々に現れる。
「ふぉっふぉっ。そんな事は幼い頃の小さないたずらじゃよ。そのくらいで、地獄に落としたりはせんよ。そうそう、三途の川でおじいさんが待っておったろ。あれものう、本当はいけんのじゃが、お前さんを亡くならならないようにしたかったようじゃの~。善行を積んだお人故、神様が叶えたのじゃろうがのう。」
そうだったんだ。俺は、せっかくのチャンスを、…フイにしちまったんだろうか。
「それで、俺は今後どうしたらいいんですか?」
「お前さんは天国行きじゃよ。あっちの金のドアを通りなされ。」
「はぁ、ありがとうございます。」
ぺこっと一礼して、ドアをくぐったのだった。
それから、しばらくして、またおじいちゃんに出会うことが出来て、天国での暮らし方を教わったのだった。天国も現世と同じように、家に住んで学校に通ったり、仕事が出来るのだけど仕事はちょっと変わっているものもあるらしい。なんせ、現金も稼がないとそれなりの生活は難しいようだった。


この作品も、とある編集部へ送った投稿作品です。
以前に送った作品は、規定枚数を超えていたので、
今回は超えないように、四苦八苦して書いた作品です。
でも、選外にもれてしまいました。
この先も続きますので、楽しみにしていてください。

物語の初めは、こちらになります。
忘れ形見 vol.1 亡くなった彼氏

物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.2 その時俺は

物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.3 死んだ俺は

物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.4 その後の俺

物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.5 その後の俺2

物語の最後は、こちらになります。
忘れ形見 vol.6 その後の私達
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