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●詩、小説●
2024-08-02 03:49:55忘れ形見vol.4その後の俺
作 林柚希
いつの間にか、俺は魂になっていた。場所は閻魔大王様の前。
鏡に、岩としての生が映し出されている。
「また、お前さんは順当に岩としての生を終えたが、次の生はどうしたいのかの?」
そうだ!急に思い出した!葵の近くで転生したかったんだ。
「葵の側に転生したいんです。」
「葵さんの側、のう。」
葵さんはのう、もうお前さんの事はあらかた落ち着いて穏やかな毎日を過ごしているんよ?
蒸し返すような事は言わん方がいいと思うがの。」
「それは、その時考えます。だから一生懸命お願いします。また葵の側で転生させてください!」
「どちらにしろのう、葵さんとは20歳以上、年齢差が出ると思うが、それでもいいかの?
それからのう、ひょっとしたら同じ女性として、生まれるかもしれんがそれでも、かの?」
「うっ…。それは…。」
一瞬考えたけど「それでも、かまいません。転生させてください。」
大魔王様もひげを触りながら「お前さんの気持ちはようわかった。あとは必死に祈って毎日天国でしばらく過ごしなされ。」
「さぁ、金のドアをくぐりなされや。」
金のドアをくぐって、またしばらくおじいちゃんと天国で暮らすことになったのだった。
◇【忘れ形見vol.5その後の俺2】
作 林柚希
「お母さん、行ってきまーす!」
「ゆうと、気をつけて行ってらっしゃい」
ぼく、ゆうと。優斗ってかくんだ。かっこいいでしょ?実は誰にもナイショにしているけど、生まれる前の記憶をもっているんだ~。一つ前はただの岩だった。その前は人間。
しかも勇人って書いて「ゆうと」って読む名前の人間だった。その時に、付きあっていた葵って人を探している。神様のおかげで、近くに生まれることができたみたいだけどなかなか会うことが叶わない。でも、いつか、きっと!
とりあえず、公園に行こうっと。
やっと公園の側にやって来て慌てて走る。友達はもう皆集まっているみたいだ。
走ると公園の入り口で、ばしっと人とぶつかってしまった。
「ぼうや、大丈夫?」
あれ?懐かしい声だ。記憶よりちょっと低いかもしれないけれど。
「ぼく、大丈夫です。お姉さんこそ大丈夫?」
「私は大丈夫よ。あら、膝に血が…。」
しゃがんで、かばんからハンカチを出して膝をぽんぽん拭いてくれる。
その時カチャッと音がして何かを落とした。
「あ、メガネが…。」
それはべっこうのメガネだった。このメガネは。ひょっとして…。あれ、葵…?
「あおい?」
「あれ?ぼうや、私の名前を知っているの?」
とっさに「ハンカチに名前書いてあるよ。」
「あら。賢いわね~。」
「お姉さん、メガネ落したよ。」そう言って、ベッコウのメガネを渡した。
「あ、これね、ありがとう。」メガネを受取る葵。懐かしそうな顔をしている。
「違うの、僕ね、ゆうとって言うんだよ。」
「ゆうと…?」
葵は、ちょっと焦点の合わない目線になった。
「懐かしい名前だわね。ぼうや、いい名前だね。」
「違うの。聞いて、葵お姉さん、ぼく交通事故で亡くなった勇人って人の生まれ変わりだよ。」
さすがにびっくりした目をして「あの勇人?まさか!?」
「そのメガネ。知っているよ。昔の恋人の勇人のメガネでしょ?」
「お姉さんをだましたりしないよ?ぼく勇人。ずっとお姉さんの事さがしてたよ。」
じーっと僕を観た後、ちょっと空を見て、葵は
「ちょっと暑い夏の日だから、夢でも見ているのかしら…?」
「夢じゃないよ。お姉さん、葵って呼んでいい?」
「葵さん、にしといて…。ちょっと混乱してしまうね。勇人なのね?」
「そうだよ、葵さん。ぼく今もゆうとって名前なんだよ」
「今も…?」
「そう、優斗って書くんだ。かっこいいでしょ?」地面に書いてにこっと笑った。
「そう、本当に転生したんだね。あれは夢じゃなっ…。」
ちょっと笑いながら泣きそうな顔をしている。
「ごめんなさい、葵さん、知らない方が良かった?」慌てて謝る。
「そんなことないよ、ありがとう、ずっと心配してくれてたんだよね?」
「うん、そう。今は幸せ?」
「毎日忙しいけど、幸せにしているよ。あれからね、私の事が心配でって面倒を見てくれる人がいたりしてね、勇人以外の人にも付きあったりしたの。でも、どこかで勇人に申し訳なくて、なかなか好きになれなかった。それでもね、今は大人になって会社で働く毎日だよ。」
「ぼくはね、必死に願ったんだよ。葵さんの近くに転生できますように、って。
でもね、葵さんに会って満足したよ。今が幸せならいいんだ。」
「勇人…。」
「私も会ってよかった。心のトゲが取れた気がする。ありがとう優斗くん。
そのハンカチ、あげるから家に帰ってちゃんと手当してね。」
「さよなら葵さん。」
「さよなら優斗くん。」
もう、十分。これでよかったんだ。もう、僕は勇人だった頃には戻れないのだから、これでよかったんだ。今の年齢には、不似合いな感慨に浸りながら、家に帰ったのだった。
この作品も、とある編集部へ送った投稿作品です。
以前に送った作品は、規定枚数を超えていたので、
今回は超えないように、四苦八苦して書いた作品です。
でも、選外にもれてしまいました。
この先も続きますので、楽しみにしていてください。
物語の初めは、こちらになります。
忘れ形見 vol.1 亡くなった彼氏
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.2 その時俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.3 死んだ俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.4 その後の俺
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.5 その後の俺2
物語の最後は、こちらになります。
忘れ形見 vol.6 その後の私達
いつの間にか、俺は魂になっていた。場所は閻魔大王様の前。
鏡に、岩としての生が映し出されている。
「また、お前さんは順当に岩としての生を終えたが、次の生はどうしたいのかの?」
そうだ!急に思い出した!葵の近くで転生したかったんだ。
「葵の側に転生したいんです。」
「葵さんの側、のう。」
葵さんはのう、もうお前さんの事はあらかた落ち着いて穏やかな毎日を過ごしているんよ?
蒸し返すような事は言わん方がいいと思うがの。」
「それは、その時考えます。だから一生懸命お願いします。また葵の側で転生させてください!」
「どちらにしろのう、葵さんとは20歳以上、年齢差が出ると思うが、それでもいいかの?
それからのう、ひょっとしたら同じ女性として、生まれるかもしれんがそれでも、かの?」
「うっ…。それは…。」
一瞬考えたけど「それでも、かまいません。転生させてください。」
大魔王様もひげを触りながら「お前さんの気持ちはようわかった。あとは必死に祈って毎日天国でしばらく過ごしなされ。」
「さぁ、金のドアをくぐりなされや。」
金のドアをくぐって、またしばらくおじいちゃんと天国で暮らすことになったのだった。
◇【忘れ形見vol.5その後の俺2】
作 林柚希
「お母さん、行ってきまーす!」
「ゆうと、気をつけて行ってらっしゃい」
ぼく、ゆうと。優斗ってかくんだ。かっこいいでしょ?実は誰にもナイショにしているけど、生まれる前の記憶をもっているんだ~。一つ前はただの岩だった。その前は人間。
しかも勇人って書いて「ゆうと」って読む名前の人間だった。その時に、付きあっていた葵って人を探している。神様のおかげで、近くに生まれることができたみたいだけどなかなか会うことが叶わない。でも、いつか、きっと!
とりあえず、公園に行こうっと。
やっと公園の側にやって来て慌てて走る。友達はもう皆集まっているみたいだ。
走ると公園の入り口で、ばしっと人とぶつかってしまった。
「ぼうや、大丈夫?」
あれ?懐かしい声だ。記憶よりちょっと低いかもしれないけれど。
「ぼく、大丈夫です。お姉さんこそ大丈夫?」
「私は大丈夫よ。あら、膝に血が…。」
しゃがんで、かばんからハンカチを出して膝をぽんぽん拭いてくれる。
その時カチャッと音がして何かを落とした。
「あ、メガネが…。」
それはべっこうのメガネだった。このメガネは。ひょっとして…。あれ、葵…?
「あおい?」
「あれ?ぼうや、私の名前を知っているの?」
とっさに「ハンカチに名前書いてあるよ。」
「あら。賢いわね~。」
「お姉さん、メガネ落したよ。」そう言って、ベッコウのメガネを渡した。
「あ、これね、ありがとう。」メガネを受取る葵。懐かしそうな顔をしている。
「違うの、僕ね、ゆうとって言うんだよ。」
「ゆうと…?」
葵は、ちょっと焦点の合わない目線になった。
「懐かしい名前だわね。ぼうや、いい名前だね。」
「違うの。聞いて、葵お姉さん、ぼく交通事故で亡くなった勇人って人の生まれ変わりだよ。」
さすがにびっくりした目をして「あの勇人?まさか!?」
「そのメガネ。知っているよ。昔の恋人の勇人のメガネでしょ?」
「お姉さんをだましたりしないよ?ぼく勇人。ずっとお姉さんの事さがしてたよ。」
じーっと僕を観た後、ちょっと空を見て、葵は
「ちょっと暑い夏の日だから、夢でも見ているのかしら…?」
「夢じゃないよ。お姉さん、葵って呼んでいい?」
「葵さん、にしといて…。ちょっと混乱してしまうね。勇人なのね?」
「そうだよ、葵さん。ぼく今もゆうとって名前なんだよ」
「今も…?」
「そう、優斗って書くんだ。かっこいいでしょ?」地面に書いてにこっと笑った。
「そう、本当に転生したんだね。あれは夢じゃなっ…。」
ちょっと笑いながら泣きそうな顔をしている。
「ごめんなさい、葵さん、知らない方が良かった?」慌てて謝る。
「そんなことないよ、ありがとう、ずっと心配してくれてたんだよね?」
「うん、そう。今は幸せ?」
「毎日忙しいけど、幸せにしているよ。あれからね、私の事が心配でって面倒を見てくれる人がいたりしてね、勇人以外の人にも付きあったりしたの。でも、どこかで勇人に申し訳なくて、なかなか好きになれなかった。それでもね、今は大人になって会社で働く毎日だよ。」
「ぼくはね、必死に願ったんだよ。葵さんの近くに転生できますように、って。
でもね、葵さんに会って満足したよ。今が幸せならいいんだ。」
「勇人…。」
「私も会ってよかった。心のトゲが取れた気がする。ありがとう優斗くん。
そのハンカチ、あげるから家に帰ってちゃんと手当してね。」
「さよなら葵さん。」
「さよなら優斗くん。」
もう、十分。これでよかったんだ。もう、僕は勇人だった頃には戻れないのだから、これでよかったんだ。今の年齢には、不似合いな感慨に浸りながら、家に帰ったのだった。
この作品も、とある編集部へ送った投稿作品です。
以前に送った作品は、規定枚数を超えていたので、
今回は超えないように、四苦八苦して書いた作品です。
でも、選外にもれてしまいました。
この先も続きますので、楽しみにしていてください。
物語の初めは、こちらになります。
忘れ形見 vol.1 亡くなった彼氏
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.2 その時俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.3 死んだ俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.4 その後の俺
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.5 その後の俺2
物語の最後は、こちらになります。
忘れ形見 vol.6 その後の私達
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