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●詩、小説●
2024-07-31 04:57:59忘れ形見vol.1 亡くなった彼氏
作 林柚希
べっこうのメガネ。これが、私に残された形見になってしまった。このメガネは、私の彼氏がよく使っていたもので、このメガネをつけた彼が、私は大好きだった。あ、いや、今もだけれど。でも、彼はバイクでの交通事故で亡くなってしまったのだった。
彼とは、昔からの付き合いで、くされ縁の幼友達でもあった。よく私を、バイクの後ろに乗っけて、デートしたっけ。富士山まで中央道をぶっとばして、バイクの後ろで私はヒヤヒヤしたものだ。でも、楽しかったなぁ。富士山近くの遊園地で遊び倒したんだっけ。
アルバムを見始める。遊園地でそっけない食事を、面白い顔しながら食べている勇人を見ていると、しょうがないなぁって思う。あ、また涙が。私、まだ立ち直ってないんだなぁ。彼がまだ、私の横で「おい、どうした。」って慰めてくれそうで困ってしまう。もう、いないのに。もう、亡くなってしまったのに。勇人。私、まだ立ち直れないよ。
ある日、私は夢を見た。自分の部屋で、ぼーっと過ごしていたら、
「よ!」と、唐突に彼が現れた。それも、ふよふよと浮いて。
「ゆ、勇人!?」
「そうだよ、元気ないな、お前」
「本物?」
「本物だよ~。神様にお願いして出てきちゃった。」
「出てきちゃった、って。化けて出てきたの?」
「違うよ~。化けてって言うなよ~。」
なんだか、生前の様な語り口で、安心したと同時に涙が出てきた。
「勇人~。私、逢いたかったよ~。」
でも、抱きしめようとしても、スカスカと掴みどころがない。
「ま、俺、幽霊だからなっ。一応」
「う、うん。そうだね。」
「怖くないのか?」
「全然怖くないよ。」
「勇人、ずーっとずーっと、一緒にいてもらえないの?」
「それは、駄目だって、言われちゃったんだ。」
「勇人、これ。」べっこうのメガネを見せる。
「これを勇人だと思って大事にしていたんだよ。」あ、涙が。
「おっ、おい、泣くなって。」
「うん。」涙を拭く。
「勇人、このメガネに宿ることはできないの?」
「無理だよ~。」勇人は困り顔だ。
「そうだよね。」
「それより、お前、俺にこだわってないで、前見て人生歩けよ。見守っているからな。」
「そんな急に無理だよ。一人じゃ寂しいし。」
「お前の事を見ている存在は他にもいるんだぞ。」
「だって、そんな存在いないもん。」
「それは、お前が気づいてないだけだって。お前、意外とモテてたぞ。」
「ヤダ。勇人がいい。」
「しょうがないなぁ。いずれまた、俺も転生っての、するから。そしたら違う形で会うかもな。」
「そうなの?」
「ああ、そうだよ。だからいいこともたくさん待ってるから、立ち直って幸せになれよな。」また、涙が出てくる。
「うん、そうだね…。」
涙をぬぐいながら、「私、勇人に出逢えてよかったと、思ったよ。だからまたどこかで出会えるといいね。」
「勇人、大好きだったよ」
「俺も、お前の事が大好きだったよ。」
「うん、ありがと。」
「俺も、ありがとう。」
頭をなでる仕草をしながら、「じゃ、俺、行くからな。」
「さよなら、勇人」
「…ちゃーん、葵ちゃーん」
あ、お母さんが呼んでる。
がばっと起きると、私は寝てたみたい。泣きながら。
「葵ちゃん、お電話よ~!」
「はーい。今行くね~」
階下のお母さんに返事をして、涙を拭いた。
「これでよし、と」
不思議な夢を見たなぁ。とりあえず、少しスッキリした。
階段を降りて、電話に出たのだった。
この作品も、とある編集部へ送った投稿作品です。
以前に送った作品は、規定枚数を超えていたので、
今回は超えないように、四苦八苦して書いた作品です。
でも、選外にもれてしまいました。
この先も続きますので、楽しみにしていてください。
物語の初めは、こちらになります。
忘れ形見 vol.1 亡くなった彼氏
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.2 その時俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.3 死んだ俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.4 その後の俺
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.5 その後の俺2
物語の最後は、こちらになります。
忘れ形見 vol.6 その後の私達
べっこうのメガネ。これが、私に残された形見になってしまった。このメガネは、私の彼氏がよく使っていたもので、このメガネをつけた彼が、私は大好きだった。あ、いや、今もだけれど。でも、彼はバイクでの交通事故で亡くなってしまったのだった。
彼とは、昔からの付き合いで、くされ縁の幼友達でもあった。よく私を、バイクの後ろに乗っけて、デートしたっけ。富士山まで中央道をぶっとばして、バイクの後ろで私はヒヤヒヤしたものだ。でも、楽しかったなぁ。富士山近くの遊園地で遊び倒したんだっけ。
アルバムを見始める。遊園地でそっけない食事を、面白い顔しながら食べている勇人を見ていると、しょうがないなぁって思う。あ、また涙が。私、まだ立ち直ってないんだなぁ。彼がまだ、私の横で「おい、どうした。」って慰めてくれそうで困ってしまう。もう、いないのに。もう、亡くなってしまったのに。勇人。私、まだ立ち直れないよ。
ある日、私は夢を見た。自分の部屋で、ぼーっと過ごしていたら、
「よ!」と、唐突に彼が現れた。それも、ふよふよと浮いて。
「ゆ、勇人!?」
「そうだよ、元気ないな、お前」
「本物?」
「本物だよ~。神様にお願いして出てきちゃった。」
「出てきちゃった、って。化けて出てきたの?」
「違うよ~。化けてって言うなよ~。」
なんだか、生前の様な語り口で、安心したと同時に涙が出てきた。
「勇人~。私、逢いたかったよ~。」
でも、抱きしめようとしても、スカスカと掴みどころがない。
「ま、俺、幽霊だからなっ。一応」
「う、うん。そうだね。」
「怖くないのか?」
「全然怖くないよ。」
「勇人、ずーっとずーっと、一緒にいてもらえないの?」
「それは、駄目だって、言われちゃったんだ。」
「勇人、これ。」べっこうのメガネを見せる。
「これを勇人だと思って大事にしていたんだよ。」あ、涙が。
「おっ、おい、泣くなって。」
「うん。」涙を拭く。
「勇人、このメガネに宿ることはできないの?」
「無理だよ~。」勇人は困り顔だ。
「そうだよね。」
「それより、お前、俺にこだわってないで、前見て人生歩けよ。見守っているからな。」
「そんな急に無理だよ。一人じゃ寂しいし。」
「お前の事を見ている存在は他にもいるんだぞ。」
「だって、そんな存在いないもん。」
「それは、お前が気づいてないだけだって。お前、意外とモテてたぞ。」
「ヤダ。勇人がいい。」
「しょうがないなぁ。いずれまた、俺も転生っての、するから。そしたら違う形で会うかもな。」
「そうなの?」
「ああ、そうだよ。だからいいこともたくさん待ってるから、立ち直って幸せになれよな。」また、涙が出てくる。
「うん、そうだね…。」
涙をぬぐいながら、「私、勇人に出逢えてよかったと、思ったよ。だからまたどこかで出会えるといいね。」
「勇人、大好きだったよ」
「俺も、お前の事が大好きだったよ。」
「うん、ありがと。」
「俺も、ありがとう。」
頭をなでる仕草をしながら、「じゃ、俺、行くからな。」
「さよなら、勇人」
「…ちゃーん、葵ちゃーん」
あ、お母さんが呼んでる。
がばっと起きると、私は寝てたみたい。泣きながら。
「葵ちゃん、お電話よ~!」
「はーい。今行くね~」
階下のお母さんに返事をして、涙を拭いた。
「これでよし、と」
不思議な夢を見たなぁ。とりあえず、少しスッキリした。
階段を降りて、電話に出たのだった。
この作品も、とある編集部へ送った投稿作品です。
以前に送った作品は、規定枚数を超えていたので、
今回は超えないように、四苦八苦して書いた作品です。
でも、選外にもれてしまいました。
この先も続きますので、楽しみにしていてください。
物語の初めは、こちらになります。
忘れ形見 vol.1 亡くなった彼氏
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.2 その時俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.3 死んだ俺は
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.4 その後の俺
物語の続きは、こちらになります。
忘れ形見 vol.5 その後の俺2
物語の最後は、こちらになります。
忘れ形見 vol.6 その後の私達
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