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●詩、小説●

2023-08-04 21:23:06

~相談~ 人魚姫



作 林柚希

ラウルにまた逢いたい。
だけど、このままじゃダメかな。
どうしよう。
少しの間迷っていました。

そうだ!
魔法使いのおばあさんがいたっけ。
ちょっと意地悪だけれど。
すると、
「意地悪だけ余計じゃ。」とおばあさんの声がしました。
「おばあさん、聞こえてたの?もう耳がいいんだから。」人魚姫は苦笑してしまった。
「いいから。ま、お前さんにちょどいい薬があるのだけれどね。悩みが解消できるような。」と誘うような声がする。
「本当!?おばあさん。ぜひ、話を訊かせて。」誘いの声に乗ってしまう人魚姫。
おばあさんの家の場所を訊くと、迷うことなく人魚姫はそこへ向かったのだった。

「おばあさん、来ましたよ~!」人魚姫は、ドキドキしながらドアをコンコンと叩いた。
「おお、来たね。まぁ、入りなさいな。」おばあさんは、ニコッと笑った。

「おばあさん、呼んでくれてありがとう。」人魚姫はまだドキドキしていました。
「いや、いいんじゃよ。お前さんは人当たりがええのう。」
「それで、私の悩みを解消する薬ってなあに?」人魚姫はおばあさんに単刀直入に訊きました。
「それが、お前さんの恋しい人が人間なんじゃろ?」おばあさんは真面目な顔つきになって言いました。
「そうなの。それでどうやってお側にいたらいいかわからなくて。」もう泣きそうな顔になっています。
「人魚のままじゃ、お側にもいけんじゃろうて。」おばあさんは頷いている。
「そうだわね。」人魚姫もうつむいている。
「それでの、いっそ人間の足になったらどうかと思ってな。」こつん、と小瓶を取りだしておばあさんは言いました。
「人間の足ですって!?」人魚姫は驚いた。
「私の人魚の尻尾が人間の足になるの?」人魚姫はその小瓶を凝視しました。
「そうじゃ、どうかの?」おばあさんはじぃっと人魚姫を見ました。

一瞬の逡巡の時、ラウルの姿を克明に思い出した人魚姫は、こう答えました。
「ぜひ、頂戴。そのお薬を。」

「そうかの。」思わずニッコリしたおばあさんが続けて言いました。
「その代わり、その美しい髪を分けてくださらんかの。」
「私の髪を?」また、人魚姫は驚きました。

「そうじゃ。お前さんの美しい髪は、…まぁ魔法の材料になるからの。」
(本当はわしの薄毛対策…、とは言わないでおこう。)
「薬と交換でどうじゃろうか、お前さんの美しい髪をな。」またおばあさんはニッコリ笑った。

「…、わかりました。髪を差し上げます。」人魚姫は覚悟を決めました。

人魚姫は、その場で短剣を渡されると美しい長い髪をバッサリと切り、おばあさんに渡しました。

「これで、精一杯。おばあさんどう?」人魚姫はほぅ、とため息をつきました。
「ありがとさん。…、これが薬じゃ。」小瓶を渡した。

薬を手渡されると、思いっきり息を吸って吐き、一気に飲み干しました。

「う…、足が。」人魚姫は、足が凍り付いたかのように冷たく感じました。

「そうそう、お前さんの体は、海岸の砂浜に置いておくからの。それでいいかの?」
嬉しそうな顔で、魔法使いのおばあさんはニッコリ笑った。

人魚姫は尻尾の異変に狂いそうになりながらもやっと、頷いたのだった。


※よく言われる所の「人魚姫」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
紹介「~邂逅~ 人魚姫 vol.1

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~嵐の夜~ 人魚姫 vol.2

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~相談~ 人魚姫 vol.3

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~お側に~ 人魚姫 vol.4

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~最期 前編~ 人魚姫 vol.5

物語の最後は、こちらになります。
紹介「~最期 後編~ 人魚姫 vol.6

物語の番外編になります。
紹介「~番外編 イチョウ並木~ 人魚姫 vol.7
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