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●詩、小説●

2024-05-22 14:14:31

こんな時僕は



作 林柚希

お兄さんなんか大嫌いだ!

僕は音楽プレーヤー
お兄さんも同じだけれども
お兄さんはたくさんの音楽を覚えている
他にも色々なことをすることができる
でも、僕はひとまわりり小さくて
音楽も少ししか覚えていられない

でも、僕を使ってくれている人間は
僕をよく使っていてくれる
朝、ジョギングをする時、
僕を連れ出して、一緒に音楽を聴いて
大きな公園を一周することが日課だ
夕方帰ってきたときも同じ

だけれども、その朝の後
通勤の時間帯、遠い会社というところへ
通っている人間はお兄さんを連れて
沢山の音楽を聴いているという

つい、羨ましくなって
お兄さんに聞いてみた
「お兄さんみたいになるには
どうしたらいいの?」
お兄さんは、困った顔をして
「お前は俺みたいには出来ていないんだよ」

僕にはそんなマネできないのか!
僕はショックだった。

「でも、お前はひとまわり小さくできているだろう?
いつでも、どこでもお供できるようにできているんだよ」

でも!でも。
僕はお兄さんみたいになりたい。
そう、思うようになっていたけれど。

ある時。
大きなラジカセさんという存在が増えた。
ラジカセさんは僕とくっついて
音楽を聴くことが出来るようになっていた
でも、お兄さんとはくっつくことが出来無いようだった
お兄さんは残念そうにしていたけれど

僕はざまぁみろ!と小さな喝采をあげたい気持ちだった
家で、人間が寛ぐときも僕を使ってくれることが増えた
物凄く嬉しかった

でもお兄さんは悔しそうじゃなくて
ただただ
「よかったな」
と言うだけだった

お兄さんは悔しくないのかな?

ちょっと複雑な後ろめたい気分だった

そうこうするうちに、お兄さんは誤作動するようになり
あまり、お兄さんは使われなくなってきた

僕はてっきり自分が勝った!と思うかと
思っていたけれど、違ってた
どうしたんだろう、お兄さん

「ラジカセさん、お兄さんどうしたのかな?」
「ちょっと故障しちゃったみたいだよ。
でも、きっと大丈夫。今修理に出かけているから」

そうなんだ。
僕は今までを振り返ってみた
初めてこの家にやってきた時
お兄さんは、優しく出迎えてくれたじゃないか!

「初めまして。よろしくな!」
そういってニコニコしてくれたっけ

お兄さん、もし故障したんまんまだったらどうしよう?
僕は初めて動揺した

いつもお兄さんは初めてづくしの僕に優しかった
音楽を初めて覚えさせられた時
初めての外出の時
怖かった僕を、慰めてくれたのはお兄さんだった

そうだ。おにいさんだったんだ

「ラジカセさん。お兄さん大丈夫だよね?」
「大したことはないんじゃない?きっとすぐもどってくるわよ」

お兄さんは、1ヶ月くらいしてから戻ってきた
なんだかはずかしそうに
新品同様になって戻ってきた

「ただいま」
「おかえり。お兄さん」
「おかえりなさい」
ラジカセさんはお兄さんとも仲が良かった

「俺さ、せっかく覚えた音楽と機能、すっかり忘れちゃったんだ」
照れくさそうに言っていたけれど
僕はびっくりした
「え!?大丈夫なの?お兄さん」
「大丈夫だろ。お前の事は覚えているからな」
心なしか、ちょっと嬉しそうだった

僕は、心の決めていたセリフを言ってみた
「ごめんね、お兄さん」

お兄さんはちょっとびっくりした顔をして
「どうした、珍しいな」
「今まで、お兄さんは僕に優しかったのに、
僕は…僕は」

「なんだ、気にすることないだろ?
お前に嫌な思いをさせちまったからな
俺も言い方を考えればよかったんだ
俺こそごめんな」

「いいんだよ、お兄さん
今まで通り、これからもよろしくな」

「そうだな。一から覚えなおしだ」

「お兄さん、一ついいことがあるんだよ」
「なんだろ?」

「ラジカセさんにね、部品さんをくっつけると
お兄さんも音楽を奏でる事が出来るようになったんだよ!」

「そうか~」
感慨深そうにお兄さんは
「俺ももうちょっと使ってもらえそうだな」
「俺もな、お前がちょっと羨ましかったんだよ」

僕はものすごくびっくりした!
「え!?なんで?」

「朝も夕方も、人間がデートって言うのにもお前を連れて行くだろ?」
「俺も、もうちょっと使ってくれないかな、って思ってたんだ」

「そっか」
「でも、家の中で使ってもらえる機会が増えるなら、それもいいもかな」
「これからも、仲良くしてくれよな!」

「そうだね、お兄さん」

ラジカセンさんは
「あら、私も仲間に入れてよね!」
「私もよろしくね」

これからの生活が楽しくなりそうだな、とやっと僕も思えるようになった
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